働いて働いて働いて、働く
1.捨て去るワークライフバランス
働き方改革関連法は、2019年4月1日から順次施行された。労働時間の上限規制、年次有給休暇の確実な取得、同一労働同一賃金など。働き方改革は安倍政権の目玉政策であった。
あれから6年、「私自身もワーク・ライフバランスという言葉を捨てます。働いて働いて働いて働いて働いてまいります」と10月、自民党初の女性総裁となった高市早苗氏は宣言した。
過労死や長時間労働は世界的に見ても異常だと言われてきた日本。ワークライフバランスは仕事と生活の調和がとれ両方が充実していること。少しずつその方向に向かっていたように思う。
2.睡眠時間と企業業績
慶應大学の山本勲教授は睡眠時間と睡眠の質を調査し、企業業績との関係を分析した。睡眠時間が長い企業ほど利益率が高いことを明らかにした。そして睡眠の質も高い企業は利益率も高いことがわかった。
即ち、長時間労働やワークライフバランスが取れていない企業ほど利益率が低く、付加価値の低い働き方をしている。過重労働を強いられているホワイトカラーは、その沼にはまる。
2023年の日本の時間あたり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、56.8ドルでOECD加盟38カ国中29位。一人あたり労働生産性(就業者一人あたり付加価値)は、92,663ドルでOECD加盟38カ国中32位と低い。
3.労働時間は短くなっているのか
OECDの2024年統計によると日本の年間労働時間(全就業者)は1,617時間と45カ国中16番目に短くなっている(一番短いドイツは1,331時間)。バブル崩壊前の1990年、年間労働時間は2000時間を超えていた。
総実労働時間が(所定労働時間+所定外労働時間)1996年以後、比較的短いパートタイム労働者の比率が高まり、その総実労働時間も減少を続けている。
一般労働者(パートタイム労働者以外の者)の総実労働時間が1996年から2017年まで2000時間を超えていた。2024年は1946時間と少し減少したが実態は余り減っていない。
労働時間が長く、企業の利益が少ない。それは日本の時間あたり労働生産性の低さを物語っている。失われた35年で、日本の産業構造も付加価値の高い産業への転換が進んでいない。
(Written by 川下行三 25/11/10)